睡眠時無呼吸症候群とは、一晩の睡眠中に10秒以上の呼吸停止が30回以上、または1時間あたりに５回以上呼吸が停止してしまうことを言います。Sleep Apnea Syndromeの頭文字を取って「SAS」とも言われます。この病気が深刻なところは、寝ている間の出来事であるため本人に自覚が無いことが多く、夜寝ていても熟睡できず、日中の眠気や呼吸停止による低酸素状態により、日常生活にまで悪影響を及ぼすことがあります。歯科医院で出来る対処法としては、マウスピースを作製して就寝中に装着してもらうことです。保険診療内でも作製できますが、耳鼻咽喉科や呼吸器科などの専門の保険医療機関からの紹介状が必要となりますので、紹介状がない場合には自費治療となり、しのはら歯科医院では３万円前後でお作りできます。では、なぜ睡眠中に呼吸が止まってしまうのでしょうか。また、呼吸が止まることにより、どのような悪影響があるのか。今回は歯科とも関わりのある、睡眠時無呼吸症候群の原因と治療法についてお話させていただきます。

 

 

 

≪原因≫

睡眠時無呼吸症候群の原因は、そのほとんどが上気道の閉塞によって起こります。喉の奥(咽頭部)が狭くなってしまい、睡眠中に舌が落ち込んで狭い咽頭部を塞いでしまうことにより、呼吸が停止します。呼吸停止による息苦しさの影響で夜中に目が覚めたり、寝付けないなどの症状を起こすのです。原因としては首周りの脂肪の沈着、扁桃肥大、アデノイドなどです。それ以外にも、喫煙者や就寝前の飲酒、高血圧、糖尿病、高脂血症の既往がある場合は要注意です。また、睡眠時無呼吸症候群は太った男性がかかるイメージがあるかもしれませんが、瘦せている女性でもかかることがあります。具体的には、首が太くて短い、下アゴが小さく後方に引っ込んでいる、歯並びが悪い、舌や舌根が大きい、などの形態的特徴のある方でも注意が必要です。

 

 

 

 

≪治療法≫

治療法としては、無呼吸を起こす程度によりますが、重度の場合にはCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸法)という睡眠時に気道に圧をかける機械を装着することで、気道の閉塞を防止します。これにより、睡眠の質を向上させるだけでなく、睡眠中の呼吸停止がなくなることでぐっすり眠ることができ、日中の眠気も解消されます。残念ながら歯科医院ではCPAPの治療を行うことは出来ませんので、専門の医療機関を受診していただく必要があります。

 

 

軽度から中等度の場合、歯科医院で専用のマウスピースを作製し、就寝中にのみ装着していただくことで解消されます。睡眠時無呼吸症候群で使用するマウスピースはスリープスプリントとも呼ばれており、上下の型取りをしてからマウスピースを作製し、下アゴを上アゴよりも前方に出した状態で上下のマウスピースを固定します。これにより、睡眠中にアゴが下方に沈下して気道を閉塞するのを防ぎます。装着した直後は慣れないこともあり、起床時には歯が浮いたような感じがする、歯の圧迫感、顎関節の違和感などの症状が出るかもしれませんが、徐々に馴染んできますのでご安心下さい。

 

 

 

≪生活習慣病との関連性≫

睡眠時無呼吸症候群には、適切な睡眠を取れないことにより生活習慣病を悪化させてしまうリスクもあります。高血圧は３倍、脳卒中３倍、糖尿病１.５倍、不整脈は４倍も発症しやすくなります。原因としては、呼吸停止による簡欠的低酸素血症と呼ばれる、全身の酸素供給の低下によるものです。また、脳への酸素供給の低下により、認知機能にも影響を及ぼすと言われています。

 

 

 

≪まとめ≫

以上のように、歯科医院でもマウスピースを作ることにより睡眠時無呼吸症候群の治療ができますが、まずは呼吸器科などの専門的な医療機関でしっかり検査、診断をしてもらうことをおススメします。また、マウスピース装着後も睡眠時無呼吸症候群が改善されているか、定期的な検査を受けるようにしましょう。