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骨粗鬆症とは、加齢などに伴う骨密度の低下や骨質の劣化により、骨強度が低下して骨折するリスクが高まる状態や疾患のことを言います。閉経期以降の女性や高齢の男性に多く認められますが、若年者の方でも栄養や運動不足などの生活習慣の乱れ、ステロイド剤(グルココルチコイド剤)の影響などで骨が脆くなることもあります。骨密度の低下により骨粗鬆症のお薬を飲まれている方もいらっしゃると思いますが、ビスホスホネート製剤(BP製剤)を服用されている場合、抜歯後に顎骨壊死を生じることがあることが報告されています。では骨粗鬆症のお薬を飲まれている場合、抜歯の処置を行う際にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
≪BP製剤とは≫
ビスホスホネート製剤(BP製剤)とは、骨粗鬆症や癌の骨転移などに対し非常に有効なため、多くの方に使用されています。しかし、BP製剤使用経験のある方が抜歯などの顎骨に刺激が加わる治療を受けた後に、顎骨壊死を引き起こすことがあることが報告されています。海外からの文献を一部抜粋すると、抜歯を行った場合、骨粗鬆症でBP製剤を服用している患者さんでは1000人に1~3人の割合で顎骨壊死が生じたと報告されています。顎骨が壊死すると、歯肉腫脹、疼痛、排膿、歯の動揺、顎骨の露出などが生じます。
≪主なBP製剤の種類≫
①ベネット錠
主成分はリセドロン酸ナトリウム水和物で、骨粗鬆症だけでなく骨ベーチェット病にも服用されます。
②ボナロン錠
主成分はアレンドロン酸ナトリウム水和物で、破骨細胞の活性を抑制することにより骨吸収を抑えて、骨量を増やす作用があります。
③フォサマック錠
ボナロン錠と同様、主成分はアレンドロン酸ナトリウム水和物です。
④ダイドロネル錠
主成分はエチドロン酸二ナトリウムで、骨粗鬆症だけでなく骨ベーチェット病にも服用されます。
≪BP製剤の休薬と抜歯の可否≫
BP製剤だけでなくステロイドやシクロホスファミド、エリスロポエチン、サリドマイド等も併用して服用されている場合、免疫機能の低下などにより顎骨壊死の発生するリスクが高まります(リスクファクター)。
①BP製剤の投与期間が3年未満かつ他にリスクファクターがない
BP製剤の休薬は原則として不要で、侵襲的歯科治療を行っても差し支えはありません。
②BP製剤の投与期間が3年以上または3年未満でもリスクファクターがある
判断が難しく、主治医と相談のうえ、主疾患の状況と侵襲的歯科治療の必要性を踏まえた対応を検討する必要があります。
③BP製剤の投与期間を3年以上継続している
BP製剤を服用中の患者さんの休薬については、外科処置の前後3ヵ月が目安となります。BP製剤を休薬するかどうか決める時は、主治医と患者さんを交えた十分な話し合いにより、インフォームドコンセントを得ておくことが大切です。またBP製剤の休薬が可能な場合は、休薬期間が長いほど顎骨壊死の頻度は低くなります。
≪BP製剤以外の骨粗鬆症のお薬≫
BP製剤以外にも、副甲状腺ホルモン製剤、女性ホルモン製剤(エストロゲン)、カルシウム製剤、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤などが骨粗鬆症の治療薬として挙げられますが、これらのお薬を服用していても顎骨壊死を引き起こすことは無いため、抜歯などの侵襲的歯科治療も問題ありません。
そのため、現在も骨粗鬆症のためBP製剤を服用している場合には主治医と相談の上、お薬の種類を変更してもらうことをオススメします。
≪まとめ≫
以上のように骨粗鬆症によりBP製剤を服用されている方の抜歯には注意が必要ですが、主治医の先生や歯科医師と相談の上、抜歯の可否を決めていくのがいいでしょう。BP製剤を服用している状態でどうしても抜歯をしなければならない場合には、高次医療機関へ紹介させていただくこともあります。また、BP製剤を飲んでいることを歯科医師に伝えず、知らずに抜歯をしてしまうと顎骨壊死を起こすことがあるため、必ず歯科医師やスタッフに伝えるようにして下さい。顎骨壊死のような副作用自体は、口腔内の細菌が原因で起こるため、お口の中を常に清潔にしておくことを心がけ、定期的に検診を受けることをオススメします。